梅雨明けの光が差し込む教室に、清涼な緑の香りが漂っていました。7月7日、高槻本校で開催した今回の蒸留会の主役は「メリッサ(レモンバーム)」。ドミニク先生の庭から摘みたての葉をアランビックへ——植物の生命を一滴のハーバルウォーター(イドロラ)へと凝縮した、夏の一日のレポートです。
生命力あふれる薬草、メリッサ
メリッサ(レモンバーム)の学名は Melissa officinalis。「オフィシナリス」という言葉は、伝統的に薬用として認められた植物にのみ冠される称号で、その歴史的な地位を物語っています。シソ科に属するこの植物は強い繁殖力を持ち、庭に植えるとあっという間に広がっていく、生命力の塊のような存在です。
ドミニク先生の庭でもメリッサは旺盛に茂り、「うちの庭はレストランだから」と笑いながら、農薬を使わず自然のまま育てた証である虫食いの穴がある葉も含め、愛情たっぷりに摘み取られてきました。手に触れるたびにふわっと広がる爽やかな香り——蒸留前からすでに、植物との対話は始まっていました。
水蒸留を選ぶ理由——植物の繊細さに寄り添う
今回採用したのは、釜の中に水と植物を一緒に入れて加熱する「水蒸留法」です。一般的な水蒸気蒸留法(網の上に植物を置く方法)ではなく、あえてこの方法を選んだことには理由があります。
「メリッサのような繊細な葉は、水蒸気蒸留法では熱によって組織がねっちょりと粘着してしまい、蒸気が通りにくくなってしまいます。水の中で植物を優しく泳がせながら加熱する水蒸留法が、植物にとって最も負担が少ないんです」と先生は話します。
水と植物の比率
生の植物の場合は植物1に対して水3が目安。乾燥植物の場合は水分を多く吸うため植物1:水5となります。水が少なすぎれば植物は焦げてしまい、香りも台無しに。素材の状態を見ながら丁寧に調整することが大切です。
犬の散歩と同じペースで——蒸留の哲学
蒸留が始まると、ドミニク先生の言葉は技術的な説明を超えて、植物との向き合い方そのものへと広がっていきました。
「犬の散歩の時に、犬のペースに合わせて一緒にゆっくり歩くのが大事。蒸留も同じです」。人間の「早く抽出したい」という気持ちで火を強め、植物を急かすことは、散歩中に犬を無理やり引っ張るのと同じこと。「植物がかわいそう」という先生の言葉には、抽出効率よりも植物への敬意を優先するという確固たる信念が込められていました。
アランビックが発する熱と、冷却水が流れる音。蒸留器の先から最初の一滴が落ちた瞬間、生葉の時よりも凝縮された力強い芳香が立ち上がります。参加者たちはその瞬間を、静かに、しかし確かな高揚感の中で受け取りました。
完成したイドロラ——香りと味の官能評価
完成したメリッサのハーバルウォーター(イドロラ)は、pH6.4〜6.5という中性に近い値。肌のバリア機能が未発達な赤ちゃんや敏感肌の方にも、優しく使えるやわらかさです。
香りはレモンのような爽やかさの中に凝縮された深い甘みが同居し、口に含むとレモンの皮を噛んだようなわずかなピリッとした苦味と酸味が広がります。これがメリッサ特有の作用の裏付けでもあります。ストレスで胃がキリキリする時、動悸や不眠、PMSによるイライラの緩和に。ヘルペスなどの炎症抑制や、ヘアスプレーとして頭の汗をリフレッシュさせる使い方も紹介されました。
今日のもう一つの主役——特製イドロラシロップ
この日のもう一つのハイライトは、複数のイドロラをブレンドした特製シロップ作りでした。カルダモン、ローズゼラニウム、スイートマジョラム、シスト(ラブダナム)、クローブ——それぞれが役割を持ち、重なり合うことで一つの香りの物語が生まれます。
シロップは湯煎でじっくりと仕上げ、ガーゼで丁寧に漉してから瓶へ。深い琥珀色に輝くシロップが瓶に注がれていく様子は、小さな錬金術のようでした。
保管は常温で——冷蔵庫は厳禁
「絶対に冷蔵庫に入れないでください」とドミニク先生。急激な温度変化はイドロラの繊細なエネルギーを損ないます。玄関など温度変化が穏やかな場所で常温保管し、数週間から数ヶ月かけてゆっくりと熟成(マチュラシオン)させることで、香りは驚くほど丸く深く育っていきます。
完成したシロップはその場でさっそく試食へ。クラッカーの上に乗せられたイチジクのコンフィチュールとともに味わうと、複雑な香りの層がふわりと広がります。「自分で作ったものは、もったいないと思わずに惜しみなく使いなさい。植物の恩恵を使い切ることこそが、彼らへの最大の感謝なのです」——先生のその言葉通り、参加者たちは今日の収穫を思う存分に受け取りました。
ドミニク先生からのコメント
植物の哲学から蒸留の技術、そして日常の暮らしへの活かし方まで、いつも話題が縦横無尽に広がるドミニク先生の蒸留会。今回もメリッサという「庭の主」と正面から向き合い、植物を愛おしむ時間をともに過ごしました。
植物のペースに合わせる
「犬の散歩の時に、犬のペースに合わせて一緒にゆっくり歩くのが大事。蒸留も同じです。人間の都合で急かしてはいけない。植物がかわいそうでしょう」
農薬なしで育てるということ
「うちの庭はレストランだから。虫も来るし、自然のままです。そういう葉っぱの方が、植物本来の力を持っている」
次回の蒸留会について
次回7月27日(月)は「ラバンジン蒸留とラベンダー探求」。ラベンダーとラバンダンの違い、そしてその奥深い世界を探求します。9月にはワイルドキャロットの蒸留も予定しています。季節とともに変わる植物との出会いを、どうぞお楽しみに。
Distillerie · 季節の植物を学ぶ蒸留会
今後の蒸留会スケジュール
季節の植物をアランビックで蒸留し、ハーバルウォーター(イドロラ)を手づくりする少人数制のワークショップです。
| 7月27日(月) | ラバンジン蒸留とラベンダー探求 | 申し込む |
| 8月10日(月) | クラリセージ | 申し込む |
| 8月31日(月) | ティーツリー | 申し込む |
現在申込受付中の講座
| 日程 | 講座名 | 場所 | 申込 |
|---|---|---|---|
| 7月27日(月) | 蒸留会(ラバンジン蒸留&ラベンダーの探求セミナー) | 高槻本校 | 申し込む |
| 8月6日(木) | クレイ入り石鹸作り講座(固形せっけん) | 高槻本校 | 申し込む |
| 8月7日(金) | クレイテラピーのワンデーレッスン(金曜日) | 高槻本校・オンライン | 申し込む |
| 8月10日(月) | 蒸留会(クラリセージ) | 高槻本校 | 申し込む |
| 8月28日(金) | クレイ美容講座(金曜日コース) | 高槻本校 | 申し込む |
| 8月28日(金) | クレイ完全講座(金曜日コース) | 高槻本校 | 申し込む |
| 8月31日(月) | 蒸留会(ティーツリー) | 高槻本校 | 申し込む |
文責:アロマ・フランス コレッジ
運営:アロマ・フランス株式会社
https://www.aromafrance.net/
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