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  • 2026.3.13

    「2000年の歴史を、蒸留する。——ミルラ(没薬)蒸留会レポート」
    「2000年の歴史を、蒸留する。——ミルラ(没薬)蒸留会レポート」

    2026年1月22日・30日の2日間にわたり、アロマ・フランス コレッジの蒸留会シリーズ特別編として、ミルラ(没薬)の蒸留会を開催しました。
    ミルラの蒸留は「いつかやりたい」と長年温めてきたテーマ。カナダの蒸留の師・ブノワ先生の協力で良質なエジプト産ミルラを入手し、ようやく実現した待望の2日間です。


    蒸留器のセットアップ

    ミルラとは——2000年の歴史を持つ聖なる樹脂

    ミルラ(没薬)の学名は Commiphora myrrha。エジプト・ソマリア・アラビア半島など、乾燥した土地に自生する低木の樹脂です。フランキンセンス(乳香)と並んで、古代から宗教儀式・医療・薫香として使われてきました。

    イエス・キリストの誕生に際して三賢者が持参したとされる贈り物のひとつもミルラ。しかしその使われ方は宗教的な意味合いにとどまらず、昔の人々にとってミルラは日常の一部——衣服の浄化や家の空気を清めるための実用品でもありました。

    ミルラ樹脂(没薬)の粒

    ミルラの木はとにかくトゲが多く、野生動物も近づきにくいほど。乾燥した過酷な環境の中で、木自身が水分を保持するために樹脂を分泌します。幹の皮が膨張と乾燥を繰り返すうちに自然と亀裂が生じ、そこから樹脂が染み出す——この「自己修復のメカニズム」こそが、ミルラの持つ「皮膚修復力」の源と言えます。

    フランキンセンスは比較的入手しやすく蒸留もしやすい植物ですが、ミルラはその木自体が少なく、品質の良いものを見つけるのも一苦労。今回使用したのは、ブノワ先生が厳選したエジプト産。フランキンセンスの4倍ほどの価格というのも、その希少さを物語っています。


    なぜミルラの蒸留は難しいのか——水蒸留と液体密度の話

    一般的な植物の蒸留には「水蒸気蒸留法」が用いられます。タンクの中に網を置き、その上に植物を載せ、下の水を沸かして蒸気を当てる方法です。しかしミルラのような樹脂は、熱を加えると溶けて網の目を塞いでしまうため、水蒸気蒸留法は使えません。

    ミルラに適しているのは「水蒸留法」——タンクの中に直接水とミルラを入れ、一緒に加熱する方法です。ただしここに大きな難関があります。ミルラの精油は水とほぼ同じ液体密度を持つため、冷却後に水と精油が分離しにくいのです。

    蒸留中の分離管と計量カップ

    そこで必要になるのが「熱」。セパレーター(分離管)内の液体を70〜80℃に保つことで、精油の密度が変化して分離しやすくなります。温度が下がるとまた混ざってしまうため、蒸留中は常に温度管理が求められます。ミルラの完全な蒸留には本来20時間かかると言われており、今回は2日間に分けて実施しました。

    1月22日に第1回目の蒸留を行い、残った素材はそのまま保持。1月30日に水を足してミルラを加え、再び蒸留を行いました。2日間かけて蒸留することで、より多くの成分を引き出すことができます。1回目から2回目にかけて香りの変化を体感できたことも、今回の大きな学びのひとつでした。


    蒸留の成果——黄金色の精油とイドロラ

    蒸留されたミルラの精油(黄色)

    2日間の蒸留を経て得られたのは、美しい黄金色のミルラ精油と、ふくよかな香りのイドロラ(ハーブウォーター)。参加者全員でその香りと味を確かめる時間は、まさに蒸留会の醍醐味です。

    ミルラのイドロラのpHは4.5。弱酸性という数値は、人の肌のpHに近く、皮膚への親和性の高さを示しています。香りはスモーキーさと甘みが混在する独特のもの。蒸留の回数や温度によって変化する香りの奥深さが、参加者の印象に強く残りました。

    また、ミルラのイドロラにはセスキテルペンが含まれることが確認されています。本来ハーブウォーターには極性のないセスキテルペンは入らないとされていますが、ミルラはこの点でも例外的な存在。それだけ複雑で豊かな成分構成を持つ植物です。


    ミルラのイドロラ——「修復」のキーワードで使いこなす

    ミルラを一言で表すなら「修復」。木が自らの傷を樹脂で塞ぐように、ミルラのイドロラは傷んだ皮膚・粘膜・毛細血管の機能回復をサポートします。

    皮膚ケアとして活用するなら、アトピーや湿疹、かかとのひび割れ、冬の唇の乾燥などにジェルやクリームに数滴加えて。毛細血管を通じた血液循環を促し、栄養を届けながら皮膚を修復してくれます。

    口内・喉のケアには、水に2〜3滴加えてうがいするのが効果的。風邪のひき始めよりも、すでに喉がヒリヒリしているとき、扁桃腺が腫れているときに特に力を発揮します。クレイと組み合わせて使うと、クレイが菌を吸着しながらミルラが粘膜の修復を促すという相乗効果が期待できます。

    日常使いなら、お風呂に5mlほど加えるだけで空気ごと変わります。スプレーに希釈して部屋に噴霧すると空間の浄化にも。1リットルの水に2〜3滴加えてちびちびと飲む方法は、消化力の低下が気になるときや更年期のサポートとして取り入れられています。ペプシノーゲンを分泌する腺を刺激し、タンパク質の分解・吸収を助けるという消化器への作用も注目されています。

    チャクラの視点ではルートチャクラ(第1チャクラ)に対応し、「地に足のついた感覚」と「内なる安心感」を養うとされています。フランキンセンスが天(上)への志向を持つとすれば、ミルラは地(下)への根づきをもたらす——フランス語でフランキンセンスが男性名詞、ミルラが女性名詞であることも、この対比を象徴しているようです。


    蒸留ノートとイドロラの熟成——時間が育てるもの

    今回の蒸留会では、ブノワ先生から受け継いだ「ディスティレーションジャーナル(蒸留ノート)」も紹介されました。蒸留した植物の学名・産地・バッチナンバー・開始時刻・最初の一滴が出た時刻・精油とイドロラの収量・使用した機器の種類・当日の天候まで記録するこのノートは、蒸留を「技術」から「探究」へと深めるための道具です。

    また、蒸留直後のイドロラは3ヶ月ほど熟成させることで、成分が安定し香りと作用が深まります。蒸留したてのものは少量を早めに使い、残りは直射日光・高温・冷蔵庫を避けた場所でゆっくり育てるのがおすすめ。冷蔵庫に入れると熟成が止まり「成長しない」イドロラになってしまうと言われています。

    参加者の皆さんには今回のイドロラをお持ち帰りいただきました。ぜひ3ヶ月後の変化を楽しんでください。


    Distillerie · 蒸留会

    この蒸留会に参加したい方へ

    アロマ・フランス コレッジでは、季節ごとにさまざまな植物の蒸留会を開催しています。
    現在申込受付中の蒸留会は下記よりご確認ください。

    現在申込受付中の講座

    日程 講座名 場所 申込
    3月16日(月) クレイ美容講座
    全3回・初心者向け
    高槻本校 申し込む
    3月16日(月) クレイ完全講座(月曜コース)
    全8回・中級者向け
    高槻本校 申し込む
    3月17日(火) 季節の植物を学ぶ蒸留会(ローズマリー)
    初心者向け
    高槻本校 申し込む
    3月18日(水) クレイ入り石鹸作り講座(固形せっけん)
    1回90分・初心者向け
    高槻本校 申し込む
    4月9日(木) クレイとマタニティケア(木曜コース)
    1回180分・初心者向け
    高槻本校 申し込む
    4月10日(金) クレイとマタニティケア(金曜コース)
    1回180分・初心者向け
    オンライン(Zoom) 申し込む
    4月15日(水) 季節の植物を学ぶ蒸留会(エルダーフラワー)
    初心者向け
    高槻本校 申し込む
    4月21日(火) 季節の植物を学ぶ蒸留会(ジャーマンカモミール)
    初心者向け
    高槻本校 申し込む
    5月20日(水) 季節の植物を学ぶ蒸留会(レモンの花)
    初心者向け
    高槻本校 申し込む
    6月10日(水) クレイ美容講座(オンライン・水曜コース)
    全3回・初心者向け
    オンライン(Zoom) 申し込む
    6月10日(水) クレイ完全講座(オンライン・水曜コース)
    全8回・中級者向け
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